【Review】では、最近読んでおもしろかった作品をご紹介しています。
今回ご紹介するのは「太陽の塔」(森見登美彦著)。
恋人に振られた大学生のひと冬が描かれた小説です。
『クリスマスって何?おいしいの?』『リア充爆発しろ!』と心の中で思っている人にぜひ読んでもらいたい作品です。
基本情報
タイトル | 太陽の塔 |
著者 | 森見 登美彦 |
出版社 | 新潮社 |
ページ数 | 206ページ |
発売日 | 2003年12月/22日 |
あらすじ
私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
引用元:「太陽の塔」裏表紙
感想
「太陽の塔」は、恋人に振られた男子大学生が妄想を膨らませ、ストーカーまがいの行為を繰り返しつつ、失恋を乗り越えていく(?)話です。
一歩間違えれば気持ち悪いストーカー男の話ですが、『バカだなぁ』とクスクス笑える話になっているところがこの小説のすごいところ。
正直、文体も古風だし、登場人物も変人ばかりで最初は少し読みずらいのですが、それがクセになってやめられなくなります。
- 溢れんばかりのクリスマスへの怨嗟
- 癖の強い登場人物たち
- 京都に住んでいる気分になれる街並みの描写
【魅力1】溢れんばかりのクリスマスへの怨嗟
失恋すれば恋人と過ごすクリスマスを羨んだり、妬ましく思うこともあるでしょう。
この小説の主人公も失恋を拗らせ、クリスマスやリア充に溢れんばかりの怨嗟の思いを抱いています。
諸君。先日、元田中でじつに不幸な出来事があった。平和なコンビニに白昼堂々クリスマスケーキが押し入り、共にクリスマスケーキを分け合う相手とていない、清く正しく生きる学生たちが心に深い傷を負ったのである。このような暴虐を看過することが出来ようか。否、断じて否である。
このような『クリスマス憎し!』の思いが続くこと3ページ…
読んでいて笑いたくなるくらいの見事な逆恨みっぷりです。笑
そして『クリスマスなど不純だ!エネルギーの無駄だ!環境破壊だ!』と叫んで、クリスマスを破壊すべく「ええじゃないか騒動」を引き起こします。
『ええじゃないか騒動って何だ?』と興味を持った方は、ぜひ自分で読んで確かめてみてください。なにせ、主人公も「ええじゃないか騒動」が何なのかよく分かっていないので。
【魅力2】癖の強い登場人物たち
恋人に振られて『なぜ彼女は自分を振ったのか』を研究するため、ストーカーまがいの行為を繰り返す主人公。
クリスマスをぶち壊すべく、四条で「ええじゃないか騒動」を企てる飾磨。
ドアをガムテープで貼りつけて主人公に一泡吹かせる遠藤。
太陽の塔を宇宙遺産に指定し、並々ならぬ情熱を注ぐ水尾さん。
揃いも揃って癖が強い!笑
この他にも3~4人ほど非常に味のある人物たちが登場しています。
(普通の人がほとんど出てこない気がする…笑)
実際にいたら友達になれるかどうか怪しいような変人ばかりなのに、全員どこか憎めなくてかわいらしい。
きっと10年経って登場人物の名前を忘れても、どんなキャラクターだったかは絶対に忘れないでしょう。
【魅力3】京都に住んでいる気分になれる街並みの描写
この作品を読むと京都の街に詳しくなった気になれます。
京都在住の方、京都に住んだことがある方にとっては『分かる分かる』と頷きたくなる描写が多々あるのではないでしょうか。
主人公たちが通う京都大学周辺はもちろん、叡山電鉄沿線、鴨川デルタ、大文字山、四条などなど、この小説には有名な場所もあまり有名でない場所もたくさん登場します。
通りの名前などもたくさん出てくるので、ひとつひとつ確認しながら読むと、実際の位置関係が分かっておもしろいかもしれません。
個人的には、主人公と飾磨が大文字山で焼き肉をしているシーンがお気に入りです。
はたして、京都の若者は大文字山で実際に焼き肉をしたりすのかは定かではありませんが…笑
おすすめ度&おすすめしたい人
おすすめ度 ★★★☆☆ |
- 恋人のいないクリスマスを寂しく思っている人
- クスクス笑いたい人
- 京都が舞台の話を読みたい人
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まとめ
「太陽の塔」は一癖も二癖もある登場人物たちが、リア充を羨みながらバカバカしい行動をする様がユーモラスに描かれた作品です。文体も登場人物も独特ですが、ハマるとクスクス笑えること間違いなしです。
恋人と過ごすクリスマスもいいですが、友達とバカやったり一人で本を読むクリスマスもまたよし。キラキラしたクリスマスとはひと味違う雰囲気を味わいたい人は、ぜひ読んでみてください。